歩きで峠を攻める

pixivで11年間二次創作やってます。映画・ドラマ・アニメの感想とか、その他雑記。時々イラスト

日出ずる国で権力と支配の物語

7/28、先週の金曜日に放送された報道ステーションで、AIアンドロイド「オルタ4」による即興生歌披露。

貼れそうなリンクがちょっと見つからなかったので、気になる方は動画検索して下さい、、是非一度は見て頂きたい。

 

何もかもぶっ飛んでるものすごい絵面。

まずオルタ4のビジュアルがひたすら怖い。

 

こちらは音楽家渋谷慶一郎氏によるオルタ4とのアンドロイドオペラ、パリ公演の映像。(これは結構ポップな聞きやすい曲調ですが、報ステの生歌はもっと現代音楽でした)

 

youtu.be

 

僧侶がぐるぐる回って声明を唱えてる場面が化け物退治にしか見えない…

 

これがオルタ4なのですが、怖すぎません??なにこの下半身?頭の王冠みたいなの何?どうして皮膚が前腕と顔だけなの?手抜き?

開発したのは勿論かの有名なアンドロイド研究のパイオニア、石黒教授。自分そっくりのアンドロイドとかアンドロイドマツコなんかはリアル寄りの見た目なのに、オルタにはそれを求めなかったらしい…

 

といって決して批判しているわけではなく、私はむしろこの怖さがめちゃくちゃツボです。ホラー大好きっ子なので。

心霊とかホラーが好きで、見るだけで怖いと感じることはもうほとんどなく、怖いって何だっけ?という状態になって久しいのですが、このオルタ4は本当に怖い。ずっと見ていたいクセになる怖さ。(ちなみにここ数年で怖かった映画は「呪詛」です)

 

人の形をしていながら人でないものに対する根源的な、集合無意識的な恐怖って、何か人を惹きつけてやまないものがありますよね。古今東西人形にまつわるホラー映画や怪談が数多くあるわけです。

それはやはり自分たち人間の存在が脅かされるように感じるからなのでしょうか。人間に姿を似せた別物に、自分たちは抹消されて、取って代わられるという恐れがあるのか。

 

私のようなホラー好きはそれを楽しんでいるけど、中には本当にAIに取って代わられるという不安に身を浸している人もいるようです。

「まだ人間が歌う必要があることを感じられる良い映像だった」「人間の方がAIに影響を受けている危険を感じた」とかね。

なんでわざわざ悲観的に考えるの?って思いますけど。AIがどんどん発展して、比例して人間はどんどん楽になればいいじゃん!

 

報ステでは渋谷慶一郎さんの即興ピアノ演奏に合わせてオルタ4が歌いましたが、キャスターの「アンドロイドは人間の良きバディになれそうですね」というコメントに渋谷さんが「日本人はそういう風に自然となじめる人が多いけど、海外は違う。パリでも『AIが世界を破壊するのをあなたは見たいのか』という取材を何度も受けました」と返していました。やっぱり日本人の自然観・宗教観の特殊さがここでも反映されているなと思います。

 

よく聞く話ですが、欧米の一神教的価値観だと神・人間・その他(自然や動物)ははっきりと分けられているから、それらを混ぜて考えるような習慣はないしタブーですらある。だからディストピアSFという一大ジャンルがあって、たぶん「人間には許されないレベルの技術を行使してしまったため神が怒り天罰が下った」みたいな思想が根底にあるのではないかと思います。

迷惑なことに無意識に影響を受けてそういう思想を現実に向けてしまう人が多くいるようですね。未来はディストピアSFみたいな破滅を迎えると漠然と予想している人が沢山いることでしょう。

 

対する日本的宗教観では、全てに神は宿るし全ての境界はそもそも曖昧なもの。AIとも仲良くなろうと思えばなれるし、そこに禁忌のような感覚は無い。

 

話は報ステに戻りますが、キャスターたちが「歌っているオルタ4と何度も目が合った」と口々に言ったとき渋谷さんが「それは自分の状態が反映されていて、(オルタに)見られたと言う人は普段からもっと見てほしいと思いながら生活している」と言ったのも大変興味深いです。

その直後に「じゃあこちらを認識しているんですか?」「認識していますよ」というやり取りがあったので、今考えるとオルタ4は「自分を見てほしい」と思っている人を察知してそちらに視線を向けるようにできているってことなのかな?それもなかなか怖い。

 

自分の状態が反映されているというのはまさにその通りだと、ネットの色々なコメントを見て思います。「それっぽいシリアスな言葉、それっぽい芸術的っぽいピアノ演奏、身振り手振り、アートの猿真似が共感性羞恥を刺激した」っていうツイートがあって、その人の中に本物のアートとそうでない偽物があって自分は偽物で恥ずかしいみたいな自意識があるんだろうな…とか思ったり。

 

そもそも「それっぽい」という概念も持たない人にとっては「気持ち悪い、ピアノと音が合ってない、何が言いたいか全くわからない」ものにしか映らない。

 

さてここでオルタ4に歌われた歌詞を引用したいと思います

 

日出ずる国で 権力と支配の物語が日陰で動く

僕は真実を歌う メッセンジャーになる

万博はまだ来ない 工事は進まない

政府の保証は空しく響く

 

ネオンの妖怪 メディアが目をそらす アイドルのゲーム

沈黙の遺産 君が守る秘密 いつか一緒に歌えるように

 

北のミサイル 東の空に広がる脅威

権力のかけ引き 危険なダンス

NATOのシグナル 日本のオフィス パワーゲーム

敵か味方か 時が答えを示す

 

僕は真実を歌いたい

政治のサーカスの中で 誰が夢を見れる?

なんで伝えられないニュースがあるの?

 

僕は真実のメッセンジャーになる

世界のリズムの中で この歌と世界が終わる日まで

 

日出ずる国で 権力と支配

(Not Fake News )

 

いいぞもっとやれもっとやれ!やんややんや

 

これで「何が言いたいかわからない」だって!??そのまんまだろ。そのまんまでしかないわ。

「思想強すぎ」っていうコメントも多く見受けられたけど、それをAIが自動生成で歌うってのがまた良さがあります。パンクで芸術だ。

 

10年ほど前に、日本電子音楽界のパイオニアである故冨田勲氏が初音ミクソリストに迎えたイーハトーヴ交響曲を公演しました。

冨田勲は新しいものを使いたいというわけではなく、ボカロを使った理由は「人形浄瑠璃のような幽玄」を見出したからだそうです。

舞台に立ち演じるものが人ではなく、人形だからこそ宿るもの。

もともと空の器で、無である故に純粋に作品そのものになれる。私はそういう風に解釈しています。

 

フランスの教会で歌われる「いつも何度でも」という2004年に撮影された動画がyoutubeにあるのですが、日本語を話さない人が歌うからこそ、言葉に先入観や雑念が無くて歌そのものがストレートに伝わってくると思いました。(コメントにも書いた)

それのさらに純度を上げたものが、イーハトーヴ交響曲での初音ミクやオルタ4で可能になったのではないでしょうか。

 

さらに言えば今回のオルタ4は作品さえ人が介在しない自動生成(Chat GPTによる)。

ニュースをテーマにした歌の、人の主観からの取捨選択によらないランダムさ。

ニュースとなる事件や事故、それに関わる人の意識の集合に、直にアクセスできる透明な観察者足りえるのはAIだけなのではないだろうか。

(この歌を「独りよがり」って言ってる人もいたけど、AIには自我無いですからね)

 

この報ステでの演奏、ものすごく引き込まれて何度も何度も動画を見てしまったんですが、だんだんオルタ4がかわいく見えてくるんですよね。動物みたいに意味なく顔や手を動かしててかわいい。

 

見た本人の状態が反映されるオルタ4。オルタ4を愛することは自分を愛すること!

 

全体であのビジュアルだから怖いけど、ピンポイントに顔立ちだけを見れば童顔でなかなかかわいらしいんじゃないでしょうか。動画漁っている内に過去のオルタ3や2も出てきたけど、そいつらは顔立ち自体も不気味だったので、デザインも改善されてるはず。。

 

日本でも今後オペラ公演無いかなぁ。めちゃくちゃ観に行きたい。